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【ICT教育】「ICT」を活用した授業改善 中学校研究発表大会

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さて、播磨町立播磨中学校にて、『「ICT」を活用した授業改善』研究発表大会を見学する機会を頂きました。

私自身、ICTが導入されることで、今までよりもっと分かりやすく、双方向的で、臨場感のある授業が展開されると期待しています。
そこに向けた各教科の先生方の努力を間近で拝見させて頂く、良い機会でした。

各教科でどんな形の授業が行われていたか、メモがてら紹介していきたいと思います。


【各教科の授業】

<英語>

英語の授業では、「want to」「need to」に続く単語を、各自タブレットに書いてもらって集約、その単語をみんなで共有した上で、各自文章を作るという授業をしていました。

最初の書いてもらうところでは、どれだけ「動詞」を書けるか、書くべき単語が「動詞」であることに気付けるか、ということになるわけですが、早い子、出来る子がスラスラと何単語も書いている一方、ピタッと手が止まってしまっている子も。
タブレットのあるなしに関わらず、「分からない」を「分かる」にするための工夫は難しいな、と感じました。

「動詞である」というヒントを与えて…うーん、これも自分で気付いて欲しいところですし、間違えた単語をみて「これは名詞なので使えない」みたいな話もしたいところなので、このヒントをいつ開示するか、タイミングが難しいですが。

この後の展開は見られませんでしたが、指導案では、
インターネットを使って、行きたい場所と、そこで出来ることの情報を集める
→「○○に行って、"動詞"したい」という文章を、質問と回答の形で作る
→ペアになって、お互いにインタビューする動画を撮って提出
という流れになっていました。

教科書だけだと、「○○に行って、"動詞"したい」が、載っている例を見て練習するだけで終わってしまうので、ここを調べて考えさせるのは面白い取り組みだと思います。

あわせて、教科書会社の方で、数人の外国人にインタビューした動画とかを用意してくれると面白いなと思いますね。


<数学>

今回は、確率の問題、ということで、「さいころシミュレーター」を使った授業でした。
前回の授業では実際に1人2回(計40回)さいころを振った、とのことで、この実際の体験との比較は面白いですね。

シミュレーターを使うところは見られませんでしたが、実際に1/6に近い値が出てくるのを目にするのは、納得のいく体験だと思います。

「確率・統計」や「図形」「グラフ」の問題と、ICTとは相性が良いのだなぁ、と思うのですが、文章題の問題になってくると活用の仕方が難しいなぁと思います。

他の教科みたいに、「どんな式になると思う?」と投げかけて集めて、面白そうな回答から解説に入る、とかが現実的かな?


<国語>

国語の授業は、金子みすゞさんの「犬」を教材とした授業でした。

詩を読んで「題名」を考えさせたり、最後の一行を隠して何を入れるか考えさせたり、授業としてはスタンダードながら、意見集約ツールとして、タブレットを活用していました。

時間があれば、「わたし」が男性か女性か、何歳くらいか、ディベートみたいな形にしても面白いのかもしれません。

どちらにつく、ではなく、男性だと感じる部分、女性だと感じる部分、それぞれの根拠を書き出してもらって、集約して提示すると、様々な意見、見え方を可視化することが出来る気がします。

また、少し意見が出ていましたが、タブレットがインターネットにつなげられるため、特に最後の一行について、自分で考えることが重要なのに、「答え」を調べることが出来てしまうんすよね…。

このあたりは、生徒との信頼関係がないと、進め方が難しいよなぁ、と思いました。
(写真は 金子みすゞ - Wikipedia より)


<理科>

理科の内容は「大地の変化」。

「隆起」「沈降」「褶曲」「断層」、またそれによって出来る地形について学び、グループで「Google Earth」を活用した調べ学習を行います。

「世界」「日本」「兵庫県」と「隆起」「沈降」「褶曲」「断層」の掛け合わせでグループのテーマを決め、それぞれ役割分担しながらレポートを作っていくという内容です。

実際に行くことのできない世界の地形について、自分たちで調べて、写真や映像を見る、という体験は、確かに教科書以上に得られるものがあるなぁ、と。

でもせっかくなら、「世界」「日本」「兵庫県」よりも「ヨーロッパ」「アジア」「アフリカ」など、大陸や地域ごとで分けた方が、ダイナミックな調べ学習が出来る気がしました。

(By Diliff - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6739706)

そうした上で、日本ならこんなところがあって、身近に見るなら兵庫県のここだよ、といった話につなげられれば、調べの学びと、先生の知識が上手く連携する形になるのではないかと思います。



(写真は Sakurai Midori - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=818316による)

兵庫県の場合は、時期的に震災の話とも結びつきますしね。

また、他の分野の授業でどう活用するか、というのも、理科の難しいところです。

今回の公開授業ではなく、事前の研究授業では、ヨウ素液・ベネジクト液の反応について、班ごとに温度や唾液の量を変えて測定し、その結果を一つの表にまとめる、という形で活用していました。

実際の研究でも使えそうな、効率的な使い方だと思いますし、物理分野・化学分野の授業でも応用出来そうだなと感じました。




<社会>

社会の授業では、これまでもタブレット学習を上手く取り入れてきたと聞いていたので、見るのを楽しみにしていました。
そもそも、特に世界地理の分野では、先ほどの理科以上に、タブレットでの調べ学習が活用しやすいのではと思っています。

今回は、オセアニア州、特にオーストラリアについての授業でした。

まずは国旗比べをすることで、イギリスとオセアニア州のいくつかの国についての関係についての考察を深め、



オーストラリアを中心に、植民地支配や移民の歴史について、さらには、多文化社会について学ぶという内容です。

意見や発想の共有、図像の提供など、先生も生徒もいろいろな形でICTを活用し慣れていることがよくわかりました。

授業の真ん中の部分を拝見していないのですが、Googleの翻訳や検索を駆使すれば、その国や産物に関する一次情報も手に入れることが出来ますし、ニュースの検索機能などを使えば、最新のトピックを活用した授業も出来るわけで、これまでにない展開の仕方も考えられる教科だと思います。

実は、先生や教科書からの情報が最新とは限らないわけですしね。

個人的には、例えば「北欧」についてなら、「デンマーク班」「フィンランド班」「ノルウェー班」「スウェーデン班」などに分けて、それぞれの「地理的特徴」「文化」「産業」「歴史」「観光」「有名人」などの分野について調べて発表させ、どの国に行ってみたいと思ったか、印象に残った写真はどれか、プレゼン競争みたいなのをさせたら面白いんじゃないか、とは思っています。


<技術/保健体育>

技術はまさにプログラミングと併用しながら機構を学ぶ授業、保健体育では保健所と保健センターの違いや役割、関連の法令についてネットで調べたりする授業が行われていました。

どちらの授業も、生徒が主体的に授業に参加できる(技術はそもそも、という部分がありますが)内容で、聞くだけ、ノートをとるだけの授業より、生徒にとって面白いだろうな、と感じました。


【総評と講演会】

公開授業の後は、播磨中学校の西野校長先生と、平郡播磨町教育長からの総評、実施された先生からの説明がありました。
私は用事があって、ここでおいとましたのですが、この後、兵庫教育大学の森山先生からのご講演がありました。

先生から頂いた資料から一次情報に当たると、文部科学省がこんな基準で調査していることが分かります。



(令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果:文部科学省 (mext.go.jp)より)

講義を聞かずに資料からの抜粋で恐縮ですが、私なりにまとめさせて頂くと、

①「ICT活用」が目指すべきところは、教育改革であげられた「主体的・対話的で深い学び」にある。
②「ICT活用」のポイントは「インプットからアウトプットへ」と授業観を転換していくことにある。
③リアルな学びは「アナログ」にあり、これを強化するための「デジタル」「バーチャル」である。
④「アナログ」「デジタル」それぞれの特性、長所を活かしながら、授業を構築していく。
⑤「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実をはかる。

ということになります。


【ICTネイティブの時代に向けて】

おそらく、これからは、教育用コンテンツがもっと充実し、「学びたい者が学びたいだけ学べる時代」が来るのだろうと思っています。

もう10年以上前になりますが、茂木健一郎先生の講演をお伺いした時、君たちがどう時間を使うかは自由なんだ、という話がありました。

その気になれば、オックスフォードやケンブリッジ、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学、東京大学の最先端の授業を無料で聞くことだってできる時代、時間つぶしのコンテンツで時間を使うのも、自分のスキルアップに時間を使うのも、君たち次第なんだ、と。

そう考えると、これからは、自分自身の未来の充実のために、自分自身の時間を設計する能力が必要とされるのかもしれません。

ネット上にあふれる様々なコンテンツは、玉石混交です。

しかし、例え私にとっては「石」なコンテンツであったとしても、それを見た他の人にとっては、趣味の世界が広がるきっかけになるのかもしれませんし、自分のスキルアップや職業選択につながっていく、まさに「珠玉」のコンテンツなのかもしれません。

学校教育の中で、どこまで教えなければならないのか、何が正解なのか、答えの出る問題ではありませんが、これから将来を設計していく子供たちにとって、有用で有益な「教育」を得るためのきっかけ、動機付けに、学校教育の場がなって行けばよいな、と思います。